介護が始まってから、親との喧嘩が絶えないという方は多いのではないでしょうか。
親は「自分はまだまだしっかりしている」「できることは自分でやりたい」と言い張る。でも、子どもの目から見ると、危ない場面が本当に多いんです。火の消し忘れがあったり、薬の飲み忘れが増えたり、段差でつまずきそうになったり。こちらは心配で「デイサービスに行ってみない?」「ヘルパーさんにお願いしよう」と提案しても、「そんなものは必要ない」と頑なに拒否されてしまう。
親の気持ちもわかるんです。誰だって自分の老いを認めたくないし、子どもに世話をかけたくないという気持ちもある。でも、このままでは何かあったときに取り返しがつかないかもしれない。そんな思いが交錯して、つい口調が強くなってしまったり、言い合いになってしまったり。優しく接したいのに、疲れているとイライラして、後で自己嫌悪に陥ってしまうこともありますよね。
毎日顔を合わせるたびに同じことの繰り返し。「またか」と思いながらも、親の安全のためには言わないわけにはいかない。でも、言えば言うほど関係がギクシャクしてしまう。介護を始める前は仲が良かったのに、今はお互いに疲れ果てているという方も少なくないと思います。
ひとりで抱え込む辛さ、誰にもわかってもらえない孤独
家族の協力があれば、まだ心の余裕も持てるかもしれません。でも、実際には自分ひとりが抱え込むことが多いのではないでしょうか。
兄弟がいても、「仕事が忙しいから」「遠方に住んでいるから」と理由をつけて、なかなか手伝ってくれない。たまに顔を出しても、「お母さん、元気そうじゃん」と軽く言われて、日々の大変さをまったく理解してもらえない。それどころか、「あなたが神経質すぎるんじゃない?」なんて言われることもあったりして。こちらが毎日必死で向き合っている苦労を、まるでわかってもらえないんです。
配偶者も理解してくれないことがあります。「親の面倒を見るのは当たり前だろう」と言われたり、介護のために自分の時間が取れなくなっていることに不満を持たれたり。家事と介護の両立で精一杯なのに、さらに配偶者への気遣いまで求められると、もう心が折れそうになってしまいます。
そして、何より辛いのは、この状況を誰にも話せないこと。友人に話しても「大変だね」と言ってもらえるだけで、本当の辛さは伝わらない。親の介護をしていない人には、この24時間365日続く緊張感や、先の見えない不安は理解できないかもしれません。
夜中に「明日もまた同じことの繰り返しなんだ」と思うと、涙が出てくることもあるでしょう。自分の人生はどこへ行ってしまったんだろう。こんなはずじゃなかったのに。そんな悶々とした気持ちを抱えながら、また朝が来て、また介護の一日が始まる。このストレスを誰かに話したいけれど、話せる相手もいない。そんな孤独を感じている方は、本当に多いと思います。
完全な解決策はないけれど、負担を軽くする方法はある
正直に言って、介護の悩みを完全に解決する魔法のような方法はないのかもしれません。親との関係も、家族との関係も、一朝一夕には変わらないものです。でも、実際の負担や心の負担を少しでも軽くする方法は確かにあります。
まず大切なのは、完璧を求めないこと。親との関係がうまくいかない日があっても、それは当たり前のことなんです。お互いに人間ですから、疲れているときもあれば、気持ちに余裕がないときもある。毎日笑顔で接することができなくても、自分を責める必要はありません。
そして、自分の時間を少しでも確保すること。たとえ30分でも、一人で好きなことをする時間を持つことで、心の余裕が生まれます。ショートステイやデイサービスなどの介護サービスを利用して、自分の時間を作ることは、決して親を見捨てることではありません。むしろ、自分が元気でいることが、長く介護を続けるためには必要なことなんです。
ケアマネージャーに話すことで見えてくること
その中でも、特におすすめしたいのが、ケアマネージャーに話を聞いてもらうことです。
ケアマネージャーは、多くの介護の現場を見てきた専門家です。あなたと親の状況を聞いて、適切な介護サービスを提案してくれるだけでなく、親との関わり方についてもアドバイスをもらえます。「うちの親も最初はデイサービスを嫌がっていましたが、こんな声かけをしたら行くようになりましたよ」といった、実践的な知恵を教えてもらえることもあります。
また、ケアマネージャーに話すことで、自分の気持ちを整理することができます。誰かに話を聞いてもらうだけで、「ああ、自分はこんなに頑張っていたんだな」と気づくこともあるでしょう。そして、「それは大変でしたね」「よく頑張っていますね」と労ってもらえることで、心が軽くなることもあります。
さらに、ケアマネージャーは親との橋渡し役にもなってくれます。子どもからは言いにくいことでも、第三者であるケアマネージャーから伝えてもらうことで、親も素直に聞き入れてくれることがあるんです。「専門家の方がそう言うなら」と、納得してくれることも少なくありません。
定期的にケアマネージャーと面談する時間を持つことで、一人で抱え込まずに済むようになります。「次の面談で相談しよう」と思えることで、日々の悩みを溜め込みすぎずに過ごせるようになるかもしれません。
介護サービスの利用についても、ケアマネージャーは心強い味方です。どんなサービスが使えるのか、費用はどのくらいかかるのか、親に合ったサービスはどれか。わからないことだらけの介護保険制度も、ケアマネージャーが一緒に考えてくれます。
ひとりで頑張りすぎないでください
介護は、決してひとりで抱え込むものではありません。親のことを一番よく知っているのは確かにあなたかもしれませんが、だからといって、すべてを一人で背負う必要はないんです。
周囲の人に相談すること、話すこと。それだけでも、心はずいぶん軽くなります。「こんなこと相談していいのかな」と思うようなことでも、話してみることが大切です。同じ悩みを持つ人は、きっとあなたが思っている以上にたくさんいます。
ケアマネージャーのほかにも、相談できる場所はたくさんあります。地域包括支援センターでは、介護の悩みを無料で相談できます。各自治体の介護相談窓口もありますし、介護者の会や家族会に参加すれば、同じ立場の人たちと悩みを共有することもできます。最近では、オンラインでの相談窓口や、介護者同士が情報交換できるコミュニティも増えています。
相談できる主な窓口
- 地域包括支援センター: お住まいの地域にある総合相談窓口。介護の悩みを無料で相談できます。
- ケアマネージャー: 担当のケアマネージャーに遠慮なく相談を。
- 市区町村の介護保険課: 介護保険制度や利用できるサービスについて相談できます。
- 介護者の会・家族会: 同じ立場の人たちと悩みを共有できる場所。
- 認知症カフェ: 認知症の方とその家族が気軽に集える場所。専門職のアドバイスも受けられます。
- 介護電話相談: 各都道府県や民間団体が運営する電話相談窓口。
親との喧嘩が絶えないこと、疲れ果てていること、もう限界だと感じること。そのすべてを、どうか一人で抱え込まないでください。誰かに話すことで、必ず道は開けていきます。
あなたは十分に頑張っています。完璧でなくていいんです。時には休んでいいし、弱音を吐いてもいい。それでも、親のことを想って日々向き合っているあなたは、本当に素晴らしいと思います。
少しずつでいいので、周囲に助けを求めてみてください。あなたの心が少しでも軽くなりますように。
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