親の介護が始まってから、生活が一変したという方は少なくありません。
以前は週末に趣味の時間を楽しんだり、友人と会ったりできていたのに、今は土日も実家に顔を出す日々。平日は仕事をして、帰宅後は介護のことを考えてる。親から突然の連絡があれば、仕事を中断して駆けつけなければならないこともあります。
気づけば、自分のための時間がほとんどなくなっています。
そんな日々を送っていると、心のどこかで「このままで大丈夫だろうか」という不安がよぎります。仕事も介護も、どちらも大切。でも、両立するのは想像以上に大変なことです。
そんな毎日を過ごしている方に、少しでもお役に立てる情報をお届けできればと思います。
職場での理解が得られず、孤独を感じていませんか?
介護をしながら働いていると、職場で肩身の狭い思いをすることがあります。
「また休むの?」という視線。言葉にはされなくても、伝わってくる周囲の反応。介護のために早退や突発休を重ねるうちに、自分でも申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまいます。
職場では、他の人と同じように仕事をこなすことを求められます。介護をしているからといって、特別扱いされるわけではありません。同じ仕事量、同じ責任、同じ成果を期待される——それは当然のことかもしれません。
でも、介護をしながらそれをこなすのは、本当に大変なことです。
急な連絡があれば、どんなに大事な会議でも抜け出さなければならないこともあります。夜中に何度も起きて介護をすれば、翌日の仕事に集中できないこともあります。心配事が頭から離れず、ミスをしてしまうこともあるでしょう。
周りの同僚に迷惑をかけている——。
そう感じるたびに、自分を責めてしまう。でも、介護も仕事も、どちらも投げ出すわけにはいかない。板挟みになって、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。
そんな状況に置かれている方は、決して少なくありません。あなただけではないのです。
仕事に集中したいのに、頭の中では親のことが気になってしまう。介護に専念したいのに、経済的なことを考えると仕事を辞めるわけにはいかない。そんなジレンマを抱えながら、毎日を必死に過ごしている方がたくさんいらっしゃいます。
もしあなたが今、そんな状況にいるのなら、まず知っていただきたいことがあります。それは、「あなたは十分に頑張っている」ということ。そして、「ひとりで抱え込まなくてもいい」ということです。
知っていますか?介護と仕事の両立を支える制度があります
実は、介護をしながら働く人を支えるための制度が、世の中にはいくつも用意されています。会社によっても、さまざまな支援制度が整っているところが増えてきました。
ただ、これらの制度は「知らなければ使えない」ものばかり。利用できる制度があることを知らずに、ひとりで限界まで頑張ってしまう方が多いのが現状です。
介護休業制度
対象家族1人につき、通算93日まで休業できる制度です。介護のための環境を整えたり、施設を探したりする時間として活用できます。3回まで分割して取得することも可能です。分割して取得できることを知らない人が多いですが、これは結構便利なんです。
介護休暇
年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで、1日または時間単位で休暇を取得できます。通院の付き添いや、急な対応が必要なときに利用できる制度です。
短時間勤務制度・フレックスタイム制度
利用開始から3年の間で2回以上、所定労働時間を短縮できる制度です。また、始業・終業時刻を柔軟に調整できるフレックスタイム制度を導入している企業も増えています。
所定外労働の免除・時間外労働の制限
介護が必要な期間、残業を免除してもらったり、月24時間・年150時間を超える時間外労働を制限したりできる制度もあります。
深夜業の制限
午後10時から午前5時までの深夜労働を制限できる制度です。夜間の介護が必要な場合に活用できます。
これらの制度を利用することで、職場での理解も得やすくなることがあります。「介護のために制度を利用している」という事実があれば、突発的な休みや早退も、周囲に理解してもらいやすくなるかもしれません。
もちろん、制度を利用するためには会社への申請が必要ですし、すべての企業で同じように制度が整っているわけではありません。でも、まずは「こういった制度がある」ということを知ることが、第一歩になります。
人事部門や総務部門に相談すれば、自分の会社でどんな制度が利用できるのか、詳しく教えてもらえるはずです。会社によっては、法律で定められた制度以上の支援を用意しているところもあります。
また、地域の地域包括支援センターでも、介護と仕事の両立に関する相談に乗ってくれます。ケアマネジャーに相談すれば、利用できる介護サービスについてもアドバイスをもらえるでしょう。
介護サービスを上手に活用することで、自分の負担を減らすことができます。デイサービスやショートステイ、訪問介護など、さまざまなサービスがあります。「家族が介護しなければ」と思い込まず、プロの手を借りることも大切な選択肢です。
制度を利用したり、サービスを活用したりすることは、決して「逃げ」ではありません。長く介護を続けていくために、そして自分自身の人生も大切にするために、必要なことなのです。
まとめ:ひとりで抱え込まないで、周囲に相談を
介護と仕事の両立で悩んでいるとき、一番大切なのは「ひとりで抱え込まない」ということです。
家族はもちろん、職場の上司や人事担当者、地域の相談窓口——。相談できる相手は、意外とたくさんいます。「こんなこと相談していいのかな」と躊躇してしまうかもしれませんが、まずは誰かに話してみることが大切です。
人事部門に相談すれば、利用できる制度について詳しく教えてもらえますし、上司に事情を説明すれば、業務の調整を考えてくれるかもしれません。同じように介護をしている同僚がいれば、お互いに支え合うこともできるでしょう。
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すれば、介護サービスの利用方法や、介護と仕事の両立に関する情報を得ることができます。自分ひとりで解決しようとせず、周囲の力を借りることが、長く続けていくための秘訣です。
介護は、いつまで続くかわからないものです。だからこそ、無理をせず、長く続けられる方法を見つけることが大切になります。
仕事を辞める決断をする前に、まずは利用できる制度がないか確認してみてください。職場や周囲の人に、自分の状況を伝えてみてください。そして、ひとりで抱え込まずに、助けを求めることを恐れないでください。
あなたが今、どんなに大変な状況にいたとしても、必ず道は開けます。周りには、あなたを支えてくれる人や制度がきっとあるはずです。
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